最初のFAXの返信が届いたとき、私は、飛び上がるほど嬉しかった。
「反応が、あるじゃないか」と。
何の実績もない、何者でもない男が、初めて自分の力で、仕事の入り口を、こじ開けた瞬間でした。今日は、私が”実績ゼロ”から、最初の仕事をどうやって取ったか ── そして、その方法の”裏側”で何が起きたかまで、正直に話します。実績がなくて、最初の一歩を踏み出せずにいる人に、いちばん届けたい話です。
誰でも、最初は実績ゼロだった
私がホームページ制作で食べていこうと決めたとき、ネットに載せられる”実績”は、ほぼゼロでした。
それまでも、知り合いや、交流会で出会った人に頼まれて、ちょこちょこ作ってはいました。中には、大型商業施設に入るスポーツクラブの、開業時のサイトを任せてもらって、その後10年ほど面倒を見た、という仕事もありました。1996年頃から、お金をいただいて作ってはいたんです。でも、それは”紹介”で来たもの。「自分の力で、知らない相手から仕事を取る」となると、見せられる実績も、来る当ても、何もなかった。
ここで、多くの人がつまずきます。「実績がないから、仕事が来ない。でも、仕事が来ないから、実績ができない」── このニワトリと卵の堂々巡りで、動けなくなる。私も、まさに、その入口に立っていました。
この堂々巡りの、いちばんやっかいなところは、”動かない理由”が、いくらでも見つかることです。「実績ができてから出そう」「もう少し準備してから」「自信がついたら」── そう言っているうちに、一年が経つ。でも、実績は、待っていても、降ってきません。順番が、逆なんです。実績ができてから動くのではなく、動くから、実績ができる。
では、どうやって、その輪を断ち切ったのか。
最初の一手は、FAXだった
時代もあって、私が選んだ最初の一手は、FAXのダイレクトメールでした。
紙一枚で、全部が伝わるように設計したDMを、会社や、整骨院のようなお店に、FAXで送る。興味を持った人が、その場で申し込み欄に記入して、FAXで返してくれる ── そういう仕組みです。いきなり「作りませんか」ではなく、まず”無料相談”の申し込みを受ける形にしていました。送った紙が、そのまま返信用の用紙になっている。今の言葉で言えば、これは「レスポンスデバイス」です。
このやり方は、私が思いついたわけではありません。当時、ダイレクトレスポンスマーケティングという手法を学ぶ場があって、その事例として、よく出てきていたんです。「売上は、こういう仕組みで作れる」と。だから私は、見よう見まねで、その紙(ツール)を、できるかぎり丁寧に作り込みました。何を伝えるか、どう申し込ませるか。ツールの完成度には、こだわった。やみくもに送ったわけではなく、”型”を学んでから、動いたんです。
商品は、5ページ6万円。それにサーバーをこちらで貸して、毎月の修正対応をつけて、月5,000円(+税)をいただく。作って終わりではなく、最初から、毎月の継続収入もセットにしていました。
最初は、怖かった。地元の神奈川に送るのが、なんだか気が引けて ── 最初に送ったのは、なんと九州です。遠ければ安全だと思ったんでしょうね。我ながら、おかしな話です。でも、その九州から、資料請求が来て、受注が取れた。「おお、ちゃんと成果が出るんだ」と。
ちなみに、最初の数百件は、自分で送りました。当時、パソコンから一斉にFAXを送れるサービスがあって、それを調べて、使った。新しいことをやるには、こういう”ひと手間”を、自分で調べて乗り越える必要があります。そこを面倒がっていたら、最初の一手すら、打てなかった。
味をしめて、次はちゃんとやろうと、3,000件のリストを用意して、FAX送信を代行してくれる業者に頼みました。すると、また反応がある。資料請求が来て、何件か成約する。このときの成約率が、6.7%。マーケティングの数字として、これは、結構高い。「FAXDMで、ちゃんと仕事が取れるんだ」と確信した瞬間でした。
何より、嬉しかったのを覚えています。最初の資料請求が届いたとき。そして、その中から制作の申し込みが返ってきたとき。「来た、取れた」と。ゼロが、一つになった瞬間でした。
ただし ── その方法には、”闇”があった
ここまで聞くと、「じゃあ、それを続ければよかったじゃないか」と思うかもしれません。でも、続けられなかった。正直に言うと、これは今まで、あまり話してこなかったことです。
FAXDMには、闇があるんです。
そもそも、相手のFAXに、勝手にDMを送りつけている。「人の紙を使って営業するな」と、クレームが来る。それくらいは、覚悟していました。でも、あるとき、業者が気をきかせて(頼んでもいないのに)、送信を3回もリトライする設定にしてくれた。しかも、送り先には、FAX兼用の電話番号も混じっていた。朝いちばん、その日の予約が入る時間に ── 電話が鳴って、出たら「ピーッ、ヒョロヒョロ」。施術中の先生が、手を止めて出たら、また「ピーッ」。それが、3回。
そりゃあ、怒ります。私だって、怒る。
激怒した社長さんから、クレームの電話が、何本も来ました。「この野郎、警察に電話するぞ」と言われたこともある。私は、ただただ、平謝りでした。誠意を尽くせば、たいていは「まあ、しょうがねえな、頑張れよ」と、最後は分かってくれる。それは、本当にありがたかった。でも、あの怒りの電話を受けるのが、つらくて、つらくて。最後のほうは、FAXを送る時間になると、こわくて、近くのショッピングモールをうろうろして、逃げていたくらいです。
効果は、ある。でも、この後ろめたさには、私のメンタルが、耐えられなかった。それで、FAXDMは、やめました。
この経験で、もう一つ学んだことがあります。どんなメディアにも、表と裏がある、ということです。効果が出る手段ほど、ときに、誰かに無理を強いていたり、後ろめたさを伴っていたりする。それが自分の性に合わなければ、いくら数字が良くても、続きません。手段は、効果だけでなく、”自分が続けられるか”でも選ぶべきなんです。私には、FAXの闇は、重すぎた。
それでも、”最初の一手”は、確かに実を結んだ
ネガティブな話をしましたが、誤解しないでください。FAXDMは、確かに効果がありました。
何もないところから、仕事が取れた。何年も続く月額収入も、ここから生まれた。そして何より ── このとき作った”最初の実績”が、その後のすべての土台になったんです。
受注した仕事を、お客様の声として、Webに載せていく。「成約率6.7%」という数字そのものも、マーケティングの実績になる。ゼロだった実績が、一つできると、それを使って、次が取れる。次が取れると、また実績が増える。あの堂々巡りを、最初の一手が、断ち切ってくれたんです。
これは、雪だるまに似ています。最初のひと握りの雪を、固めるのが、いちばん大変。でも、芯ができてしまえば、あとは転がすほどに、勝手に大きくなっていく。実績ゼロの人がやるべきは、いきなり完璧な雪だるまを目指すことではなく、まず、芯になる”ひと握り”を、なんとか固めることなんです。
そして、「FAXを送らずに、ネットで募集できないか」という、その後の発想 ── 19万8000円でのオンライン販売も、その先のブランディングも、すべては、あのFAXの経験から生まれました。最初の一手がなければ、その先は、何もなかった。たとえ続けられなかった方法でも、”動いた”という事実だけは、ちゃんと残ったんです。
教訓 ── 手段は変わる。でも「ゼロから動く」は、変わらない
この話から、あなたに持ち帰ってほしいことは、三つです。
一つめ。誰でも、最初は実績ゼロです。だから、最初の仕事を取るには、動くしかない。待っていても、ニワトリと卵は、回り始めません。
そして、最初の一手は、たいてい、かっこ悪い。私だって、怖くて、九州にこっそり送るところから始めました。完璧なスタートなんて、ないんです。みっともなくても、小さくても、まず一歩を踏み出した人が、半年後には、まったく違う場所に立っています。
二つめ。手段は、時代によって変わります。私はFAXでしたが、今、同じことをFAXでやる必要はない(やれば効果はありますが、もう時代ではないし、何より、あの闇もある)。今なら、YouTube、note、メルマガ、LINE、インスタのリール、ショート動画 ── 知らない相手に、自分から声を届ける手段は、いくらでもあります。手段が新しいほうが、まだ誰もやっていないぶん、目立てる、という利点もあります。
三つめ。ただし、”ただ送るだけ””ただ発信するだけ”では、ダメです。私のFAXには、「どう申し込むか」を、迷わず分かる形で、書いてありました。読んだ人が、そのまま行動に移せる ── その”導線”があったから、反応が返ってきた。YouTubeでも、noteでも、同じです。見た人が、次にどこへ進めばいいのか。その一本の道を、ちゃんと用意しておかないと、どれだけ発信しても、反応は返ってきません。
発信を頑張っているのに成果が出ない人の多くは、ここが抜けています。良い動画、良い記事を出している。でも、見た人が「で、どうすればいいの?」となったまま、去っていく。私のFAXが反応を取れたのは、内容が飛び抜けて良かったからというより、”次の一歩”が、はっきり示されていたからなんです。
あなたが、今日からできること
実績ゼロでも、最初の一手は、今日、打てます。
あなたの仕事の中で、いちばん語れることを、一つ、世に出してみる。動画でも、記事でも、形は何でもいい。大事なのは、ありきたりな「お願いします」「仕事ください」で終わらせないこと。同じことを、みんながやっている。横並びの中に埋もれたら、選ばれません。「この人だ」と思ってもらえる、あなたにしか出せない中身を、出すこと。
私のところには、今でも「仕事をください」というメールが、よく届きます。でも、その多くが、判で押したように同じ。どこの誰で、何ができて、どんな実績があるのか ── いちばん知りたいことが、書いていない。これでは、選びようがない。逆に言えば、そこをきちんと示すだけで、あなたは、その他大勢から、一歩抜け出せます。
そして、反応が少なくても、続けること。私のFAXも、一発で当たったわけじゃない。最初は怖くて、九州にこっそり送っていたくらいです。続けて、試して、はじめて手応えがつかめる。最初の一手は、地味で、こわい。でも、それを打った人だけが、次の景色を見られます。
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何者でもないところから、最初の一手を打つ。手段は、あの頃のFAXから、今の動画や記事に変わりました。でも、「ゼロから動いた人だけが、実績を手にする」── これだけは、昔も、今も、変わりません。
あの頃の、怖くてショッピングモールに逃げ込んでいた私に、もし今、声をかけられるなら、こう言うと思います。「逃げてもいいから、一手だけは、打っておけ」と。その不格好な一手が、あなたの全部の、始まりになるんだから。



