社長の最大の武器は、本人が「関係ない」と隠していたものだった

社長さんと話していると、ほとんどの方がこう言います。

「うちには特徴なんてないですよ」「ごく普通の会社です」と。

でも、30年この仕事をしてきて断言できます。特徴のない社長は、一人もいません。ただ、いちばん強い武器を、本人が「これは関係ない」と隠してしまっているだけなんです。

しかも厄介なことに、その隠している部分こそが、たいてい一番の武器です。だから私の仕事は、それを掘り起こすことから始まります。今日は、その「隠していた武器」が表に出た瞬間の話を、3つお話しします。

なぜ「一瞬で伝わる肩書き」が効くのか

社長を特別なポジションに見せるために、私はよくパーソナルブランディング——相手が社長なので「社長ブランディング」と呼んでいます——をやります。

そこで一番効くのが、一瞬で伝わる肩書きです。見た瞬間に「あ、この人はこういう人か」と分かる。これがあるかないかで、集客はまるで変わります。

ところが社長本人は、その肩書きの素を「自分には特徴がない」と言って隠している。実例を見てください。

事例1:聞き上手な税理士

ある税理士さんのホームページを作るとき、2時間ほどお話を伺いました。差別化のポイントを探したのですが、出てくるのは「普通の税理士です」「決算をやっています」という話ばかり。優秀な方なのは分かるのに、他社との違いが見つからない。

そろそろ終わり、という締めの頃に、ポロッとこう言われたんです。

「私、お客さんの話を4時間でも5時間でも平気で聞けるんですよ」

これだ、と思いました。経営者の多くは、税理士に「自分の話を聞いて、悩みを一緒に整理してほしい」と思っています。でも実際は「数字しか見てくれない」「相談に乗ってくれない」という不満を抱えている。

つまり「聞き上手」というのは、相手がいちばん求めているのに満たされていないポイントそのものなんです。

ホームページのヘッダーに「聞き上手な税理士」と入れたところ、名刺交換のたびに「すごいですね」と評判になり、最終的にこの肩書きは商標として登録されました。

事例2:お坊さん弁護士

別の弁護士さんは、遠方の県からわざわざ神奈川の私の会社まで来てくださいました。会社員を経て50歳で司法試験に合格した方で、若い頃の弁護士としての実績はありません。2時間話しても、これといった特徴が出てこない。

これも話題が尽きた頃に、ポロッと出ました。

「実は実家がお寺で、僧侶の資格があるんです。忙しい時期はお経を上げに回っています」

「それ、お坊さん弁護士じゃないですか」と私が言うと、本人は「お坊さんは弁護士と関係ないですよね」と。

いやいや、これはイメージづくりです。お坊さんは信頼される。人のために動いてくれるイメージがある。その印象を弁護士に重ねれば、「この人になら相談しやすい」と想像してもらえる。しかも、お坊さん弁護士は全国に3人しかおらず、ネットで発信している人はほぼいない。つまりオンライン上ではオンリーワンです。

「お坊さん弁護士」とヘッダーに掲げたところ、公開の翌月から県外からも相談が入るようになり、地元紙の取材や講演依頼まで来るようになりました。

この先生も、こう言っていました。「関係ないと思って、ずっと隠すつもりでした」と。

事例3:元・飛行機整備士のバイク店

あるバイク店さんは、近くに大型量販店ができてお客さんが流れ、困っていました。バイク店はもともと特徴が出しにくい業種で、ここでも話は難航しました。

打ち合わせが終わる頃、また出てきます。

「実は私、自衛隊で戦闘機の整備士をしていまして。その後アメリカで飛行機のライセンスを取って、小型機のインストラクターもしていました」

「それじゃないですか」と私。本人は「バイク屋と関係ないから隠しておこうと」。

飛行機は整備が悪ければ、空の上で命に関わります。その緊張感で整備をしてきた人が、いまバイクを整備している——これは技術の高さを伝えるのに、これ以上ない肩書きです。

量販店は若いスタッフが多く、数年で異動してしまう。長く付き合って相談したいベテランライダーには物足りない。一方こちらは代々続く店で、担当が変わらない。そこへ「元・飛行機の整備士のバイク店」という看板が加わると、住み分けがはっきりします。

このコピーは8年経った今もそのまま使われ、ベテラン層がしっかり来るようになりました。

この社長さんも、やはり言いました。「関係ないから、隠しておこうと思った」と。

3人に共通する「隠したい一言」

3人とも、口をそろえて「関係ないから隠していた」と言うんです。まるで悪い秘密のように。

これは、自分の強みは自分には見えないという典型です。毎日やっていて当たり前すぎるから、価値に見えない。過去の経歴だったりすると、なおさら「もう関係ない」と思ってしまう。

でも、外から見れば、それは立派な特徴です。長く続けてきたこと、普通の人なら根気が続かないこと——そこにこそ才能が埋まっています。それを「お客さんが来る形」に結びつけたとき、社長ブランディング最大の武器が見つかります。

ただ、これは自分一人ではなかなか掘り出せません。だから、外の目で引き出してもらうのがいちばん早い。目的を持った話し合いを2時間ほどして、「もういいかな」と思った頃に少し雑談をしてみてください。隠しきれなかった一言が、ポロッと出てくるはずです。それが、あなたの最大の武器です。

ちなみに私自身にも、「仕事に関係ない」と言ってこなかったことがあります。実は少林寺拳法の黒帯なんですが……これがホームページ制作にどう役立つのか、正直まだ分かりません。専門家の私でさえ、自分の隠し札の使い道は見えていない。それくらい、自分の武器は自分から見えないものなんです。

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